はじめに
「ジェンスパーク(Genspark)を使えば、プログラミング経験がなくてもアプリが作れる」
これは半分正しく、半分間違っています。確かにジェンスパークは強力ですが、正しい手順を踏まないと、すぐに混乱します。
このシリーズでは、ジェンスパークが嘘をつく、忘れる、バグを埋め込む、固まるという4つの問題を取り上げてきました。
今回は総集編として、私がWebサイトを開発する中で確立した、ジェンスパークを使った開発の実践的なワークフローをご紹介します。このプロセスに従えば、初心者でも挫折せずにプロジェクトを完成させられます。
AI開発の全体フロー
→ クイックリファレンス → 本開発 → 継続的な更新
それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
ステップ1: 構想をチャットに入力
まず、あなたのアイデアをジェンスパーク(Genspark)に伝えます。この段階では、細かい技術的な詳細は不要です。
良い構想の伝え方
「ジェンスパーク開発奮闘記」というブログサイトを作りたいです。
目的:
- GenSparkやAI技術に関する情報を発信
- 開発の体験談を共有
- 読者に役立つ技術情報を提供
機能:
- メインサイト(genspark-dev.net): 1500-2000字の記事を公開
- はてなブログ連携: 要約を週3回自動投稿
- 記事カテゴリ: 開発体験談、ジェンスパーク機能紹介、
開発ツール紹介、AI技術一般
技術スタック:
- フロントエンド: React + TypeScript + Vite
- バックエンド: Cloudflare Pages Functions
- データベース: Cloudflare D1
- ストレージ: Cloudflare R2
予算:
- 年間$12程度(Cloudflare無料枠+ドメイン代)
参考:
- 以前作ったWebサイトのコードを70-80%再利用したい
ポイント
- what(何を):作りたいもの
- why(なぜ):目的・背景
- how(どう):技術的な方向性
- 参考情報:既存プロジェクトやイメージ
曖昧な部分があっても大丈夫。AIとの対話で詰めていけます。
ステップ2: 構想をAI Driveに保存
ジェンスパーク(Genspark)との対話で構想が固まったら、すぐにGenSpark AI Driveに保存します。
保存する理由
- チャット画面が消えても、構想は残る
- 後から見返して、初心の確認ができる
- 新しいチャット画面でも、すぐに状況共有できる
保存コマンド例
今までの会話を元に、「プロジェクト構想書」を作成して、
以下のパスに保存してください:
/ジェンスパーク開発奮闘記/00_AI指示書.md
含めるべき内容:
- プロジェクトの目的
- 主要機能
- 技術スタック
- 予算と制約
- 参考情報
- AI(あなた)の役割
- 開発スケジュール
ジェンスパークが作成した内容を確認し、修正があれば追加で指示します。「保存しました」という報告を鵜呑みにせず、必ず内容を確認してください。
ステップ3: プロトタイプを作る
いきなり完璧なものを作ろうとせず、まず動くものを作ります。
プロトタイプの目的
- 技術的な実現可能性を確認
- 開発環境のセットアップ
- 基本的なフロー全体のつながりを検証
プロトタイプの範囲(例)
【フェーズ1: 最小限のプロトタイプ】
- ✅ プロジェクトの初期セットアップ(React + Vite)
- ✅ Cloudflare Pagesへのデプロイ
- ✅ 1つの記事を表示するページ
- ✅ 記事データをD1から取得
【まだ作らない】
- ❌ 管理画面
- ❌ はてなブログ連携
- ❌ 自動投稿機能
- ❌ 複雑なデザイン
プロトタイプは2-3日で完成させることを目標にします。
プロトタイプ開発の依頼方法
プロトタイプを作成します。以下の機能を実装してください:
1. React + TypeScript + Viteのプロジェクト作成
2. 記事を1件表示するページ
3. Cloudflare D1から記事データを取得するAPI
4. Cloudflare Pagesにデプロイできる設定
一度に全て実装せず、1つずつ進めましょう。
まず、プロジェクトの初期セットアップからお願いします。
段階的に進めることが重要です。
ステップ4: 仕様書をAI Driveに作成
プロトタイプが動いたら、次は詳細な仕様書を作成します。
なぜ仕様書が必要か
- ジェンスパーク(Genspark)は忘れる:チャットを変えると、前の会話を覚えていない
- 人間も忘れる:1週間後に「何を決めたっけ?」となる
- 変更管理:仕様変更の履歴を残す
- 新規参加者:他の人がプロジェクトを理解できる
仕様書の構成例
# プロジェクト仕様書 v1.0
## 1. プロジェクト概要
[プロジェクトの目的、背景]
## 2. システムアーキテクチャ
[技術スタック、システム構成図]
## 3. データベース設計
### 3.1 articlesテーブル
| カラム名 | 型 | 説明 |
|---------|-----|-----|
| id | INTEGER | 主キー |
| title | TEXT | 記事タイトル |
| content | TEXT | 本文 |
## 4. API仕様
### 4.1 記事一覧取得
- エンドポイント: GET /api/articles
- レスポンス: { articles: [...] }
## 5. 画面遷移
[ユーザーの動線]
## 6. 開発フェーズ
[Phase 1-5の詳細]
ステップ5: クイックリファレンスを作成
仕様書が大きくなると、ジェンスパーク(Genspark)は全てを読み込まなくなります。
クイックリファレンスの役割
仕様書が50ページになっても、最も重要な情報を1-2ページにまとめたものです。
クイックリファレンスの例
# クイックリファレンス
## プロジェクト基本情報
- 名称: ジェンスパーク開発奮闘記
- URL: genspark-dev.net
- 技術: React + TS + Cloudflare
- 予算: $12/年
## 重要な制約・決定事項
1. はてなブログのみ使用(Twitterは使わない)
2. メインサイトリンクは3回に1回
3. 記事は月・水・金に投稿
4. コードはWebアプリから70-80%再利用
## よくある問題と解決策
### 問題1: 環境変数が読めない
→ wrangler.tomlと.dev.varsの両方を設定
### 問題2: D1への接続エラー
→ binding名が正しいか確認(DB)
## 次のタスク
- [ ] 記事管理API実装
- [ ] はてなブログ連携
- [ ] 自動投稿機能
クイックリファレンスの使い方
新しいチャット画面で最初に実行:
以下のファイルを読み込んで、プロジェクトを把握してください:
1. /プロジェクト名/01_設計資料/クイックリファレンス.md
2. /プロジェクト名/02_作業記録/最新.md
読み込み後、要約を教えてください。
これで5分以内にAIが状況を理解します。
ステップ6: AIが忘れた時の対処法
開発を進めていると、ジェンスパーク(Genspark)がこう言い出します:
ジェンスパーク:「申し訳ありません。そのプロジェクトの詳細が分かりません」
これは正常です。ジェンスパークは忘れる生き物なので、思い出させます。
思い出させるコマンド
【パターン1: 基本情報を忘れた】
「/プロジェクト名/01_設計資料/クイックリファレンス.md を読み込んで、
プロジェクトの概要を教えてください」
【パターン2: 技術的な詳細を忘れた】
「/プロジェクト名/01_設計資料/技術仕様書_v1.0.md の
『データベース設計』セクションを読み込んで、articlesテーブルの
構造を教えてください」
【パターン3: 過去の決定事項を忘れた】
「/プロジェクト名/02_作業記録/2025-12-03.md を読み込んで、
Twitter API問題をどう解決したか教えてください」
部分的な読み込みがポイント
仕様書全体を読ませると、重要な部分が埋もれます。必要な部分だけを指定して読ませるのがコツです。
ステップ7: 仕様書を常に更新する
開発中に仕様が変わったら、すぐに仕様書を更新します。
更新のタイミング
- ✅ 新機能を追加した
- ✅ 既存機能の仕様を変更した
- ✅ 重要な問題を解決した
- ✅ データベーススキーマを変更した
- ✅ API仕様を変更した
更新方法
仕様書を更新してください:
ファイル: /プロジェクト名/01_設計資料/技術仕様書_v1.0.md
更新内容:
- 「3. データベース設計」セクションに、新しい
`hatena_post_counter` テーブルを追加
- カラム: id (INTEGER), counter (INTEGER), updated_at (DATETIME)
更新後、変更内容を要約してください。
実践例:Webサイトから始まったプロジェクト
私の実際のワークフローを紹介します。
Day 1: 構想とAI Drive保存
- チャットで「Webアプリを作りたい」と相談
- 対話を通じて機能を詰める(3時間)
- 構想を
/占いプロジェクト/00_AI指示書.mdに保存 - 👉 この時点でチャット画面を一度リセット
Day 2: プロトタイプ作成
- 新しいチャット画面で
00_AI指示書.mdを読み込み - React + Viteの基本セットアップ
- 占い結果を1つ表示するページを作成
- Cloudflare Pagesにデプロイ成功
- 作業記録を
/占いプロジェクト/02_作業記録/2025-11-01.mdに保存
Day 3-5: 仕様書作成と本開発
- 詳細な仕様書を作成(
技術仕様書_v1.0.md) - データベース設計
- Twitter API連携の実装
- 👉 この段階でAIが「プロジェクトを忘れる」問題が発生
- クイックリファレンスを作成
Day 6-10: クイックリファレンスで効率化
- 新しいチャット画面で開発再開
- 最初に必ずクイックリファレンスを読み込ませる
- 効率的に開発が進む
- 作業記録を毎日更新
Day 11-: 運用と継続的改善
- デプロイ完了
- 問題が発生したら、トラブルシューティングドキュメントに記録
- 仕様変更があれば、すぐに仕様書を更新
まとめ:AI開発の7つの鉄則
- 構想はチャットで詰めて、すぐAI Driveに保存 - 消える前に保存が基本
- プロトタイプで実現可能性を早期検証 - 2-3日で動くものを作る
- 仕様書は詳細に、AI Driveで管理 - 後から見返せる「設計図」
- クイックリファレンスで素早く思い出させる - 1-2ページの要点まとめ
- ジェンスパーク(Genspark)が忘れたら、必要な部分だけ読み込ませる - 全文読ませると埋もれる
- 仕様書は変更のたびに更新 - 古い情報は混乱の元
- 作業記録を毎日AI Driveに保存 - チャットが消えても大丈夫
このワークフローに従えば、ジェンスパークの「嘘をつく」「忘れる」「バグを埋め込む」「固まる」といった問題を最小化できます。
AI開発は、人間とAIの協働作業です。ジェンスパークの弱点を理解し、適切なツール(GenSparkのAI Drive)を活用することで、初心者でも本格的なアプリケーションを完成させることができます。
このシリーズで学んだことを活かして、あなたも実際にAI開発に挑戦してみませんか?ジェンスパークを使えば、構想から実装まで、全てをAIとの対話で進められます。